元々は、亀電の前身の一つである摂丹鉄道の1形電車として設計された電車である。
摂丹鉄道は、計画では丹波高地の山々を越えて都市間を結ぶインターアーバンとなるはずであった。そのため、この1形は長距離・急勾配に対応できる高性能電車として設計されている。
1916年、摂丹鉄道・京亀鉄道・南丹鉄道が頓挫、完成していた区間だけで亀岡電鉄として運行を行うことが急遽決定したが、その時点で、この電車は既に製造に取り掛かっていた。さらに1917年に開業することになったため、再び一から亀電の規模向けに電車を設計し直し、新しい機器を調達していては間に合わなくなり、この1形は結局、長距離急勾配のインターアーバン向け設計のまま6両が製造された。
そのような経緯から、登場当時、この電車は、亀電の規模にはオーバースペックだと言われていた。しかし予想以上の客足により、阪堺電気軌道から7形を購入せざるを得ないような状況となったことから、この1形の輸送力は決してオーバーではなかったことが証明された。そしてさらに、その7形は奥条〜温泉口間の急坂を、営業に耐えうる速度で登れないことが判明、結果的に1形の走行性能は亀電に適していた事が判明した。そして最終的には1形よりも大形で強力な100形が登場するに至っている。
戦争を越えて1950年代まで使われていたが、1960年の400形登場に伴う集電方式のパンタグラフへの変更の際、パンタに改造されることなく全車が廃車となった。
なお、取り外された機器の一部が保存されて後に91形に再利用されている。
現在、1形1号が亀岡市運動公園にて静態保存されている。
車体は木製で、屋根はダブルルーフとなっている。
デッキを持たず客用扉を備えており、いわゆる密閉式運転台となっている。
主電動機は、比較的出力の高い、ゼネラルエレクトリック社製GE-90が採用されている。
台車も高速電車用の上位モデルであるBRILL27E-1を履いている。
登場当時はダブルポール集電であったが、後にシングルポール集電に改められた。
制御装置 | 電磁単位スイッチ式抵抗制御 |
主電動機 | GE-90 直流直巻電動機 |
駆動装置 | 吊り掛け駆動 |
台車 | 27E-1 車体支持方式:スイングハンガー式 枕ばね:板ばね式 台車支持方式:ペデスタル式 製造:ブリル |
制動方式 | 発電制動併用非常弁付直通空気ブレーキ |
構体 | 木製 |
製造両数 | 6 |
登場年 | 1917年 |
製造 | 川崎造船 |