車両紹介-300形



↓登場時の姿

概要

戦時中、亀電はその立地も幸いして空襲を経験せず、車両の喪失は一切無かった。しかし、当時亀電に在籍していた車両は戦時下で十分な整備が受けられないまま酷使され消耗、また温泉という娯楽の復活で乗客数は右肩上がりと、新車の導入が必要な状況であった。そこで登場したのがこの300形である。
新車の導入は戦後すぐに計画されたものの、その当時、私鉄が新車を導入するには運輸省によって定められた規格に従った所謂『運輸省規格型電車』の枠を割り当てられる必要があった。しかし亀電はこの運輸省規格型電車のどの規格も車両限界から導入不可能であり、また車両の喪失もないため、枠が割り当てられなかったのである。 その後、1949年に運輸省による制約が緩和されると、亀電への新車の製造も可能となり、この車両が登場した。
300形は運輸省規格型電車には分類されないが、その設計は運輸省規格型電車B'型の車幅を調整し、窓2枚分だけ車体長さを短くしただけで、各部寸法は運輸省規格型電車そのものである。 これは、設計の手間を省くためである。また部品の融通を利かせ、さらに製造に慣れた電車と似た電車を作ることで、製造の効率化にも繋がった。その結果、納入を早急に行うことに成功している。 実際この車両は発注から1両目入線まで1年を要しておらず、規格型類似品の強みを見せつけている。
しかし、この車両は急造廉価品であるため構造がかなり簡素化され、操作性も良いとは言えなかった。このような事情から、この電車は不良品と評される事もあった。
100形200形の500形への改造が進むことで輸送力が増強されるにつれ、定期運用には400形・500形が優先的に登用されるようになり、結果として300形の定期運用は徐々に減っていき、1980年にはこの車両の定期運用は無くなっている。
しかし1987年にバブル景気や温泉ブームに伴う増発の際、この車両は新車の導入までの繋ぎとして再び定期運用に登用され、800形の導入が完了する1994年まで続いた。
その後、900形が登場するまでこの車両は予備車として使われ続け、2004年に全車廃車となった。不良品と呼ばれながら半世紀以上も生き抜いたのである。
現在では301号が新家車庫にて保存されている。『不良品』とも呼ばれた電車を保存する意義を鉄道アナリストに問われたこともあるが、亀電は「戦後の混乱期の中で亀電を支えた大切な電車であり、亀電の歴史を語る上で外せない電車だ。電車の出来は関係ない。(要約)」と回答している。また、一部の車両は近隣の私鉄へと譲渡された。

車体

運輸省規格型電車B'型と類似した構造を持っている。
半鋼製車体で、二段窓にウィンドウシルを持つ。
前面は非貫通構造で運転台は中央に配置されている。

機器

主制御装置は電動カム軸式抵抗制御装置を採用。
主電動機は出力48.5kWの直流直巻電動機を採用。
亀電の車両の床下機器は基本的に抵抗器は北側に制御装置を南側に設置している。しかしこの車両はそのような亀電の仕様からは外れ、抵抗器も南側に設置されている。これは仕様の統一よりも車両の一刻も早い導入を優先したためである。
集電装置は登場当時はポール集電であったが、1960年にパンタグラフに改められている。


仕様・性能

制御装置電動カム軸式抵抗制御
主電動機直流直巻電動機
48.5kW×4
駆動装置吊り掛け駆動
制動方式発電制動併用非常弁付直通空気ブレーキ
台車車体支持方式:スイングハンガー式
枕ばね:板ばね式
台車支持方式:イコライザー式
製造:扶桑金属工業
構体普通鋼
全長14.3m
製造両数6
登場年1949年
製造川崎車輛


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