車両紹介-400形

概要

 亀電が1960年に導入した通勤電車です。駆動方式は亀電で初めてカルダン駆動が採用されました。また、現在の亀電の車体規格は400形にて初めて採用されました。亀電の近代化の皮切りとなった車両であり、また長らく亀電のフラッグシップ車であったことから、鉄道ファンからは根強い人気があります。6両が製造されましたが、老朽化を理由に2015年10月から廃車が始まり、現在では404号1両のみが動態保存を兼ねて予備車として在籍しています。

登場の経緯

 1950年代の高度経済成長期、亀電は不動産事業に力を入れ始めます。元々の亀岡市街地の外郭を埋めていく形で亀電沿線を宅地として開発し、新たな収入源にしようとしたのです。しかしそれによって亀電の需要がこれ以上増加した場合、慢性的な輸送力不足に陥ることも明白でした。そこで計画されたのが400形です。

外観

 車体は普通鋼製溶接構造となっています。400形導入の際、亀電全線で拡張工事が行われ、車両限界が大幅に拡大されました。これによって、400形は全長15m・車幅2.6mという大型車体を採用できました。400形以前の車両が全長14.3m・車幅2.3mに制限されていたことから考えると、大幅な輸送力増強と言えます。15mという比較的短い全長でありながら、車幅は2.6mに達する独特の車体規格は、以降の亀電の標準となりました。
 当初から2両編成での運転を前提としており、貫通扉を備えています。窓回りからはシル・ヘッダが無くなり、また張り上げ屋根が採用され、近代的なスタイルとなっています。そのスタイルからは日車標準型車体の影響が見てとれます。

機器

 主電動機は東洋電機製の出力53kWの直流直巻電動機が採用されています。主制御装置は抵抗制御に直並列制御・弱界磁制御を付加した、大手私鉄向けに匹敵する高性能なものが採用されています。歯車比は84:15=5.60の加減速性能重視のセッティングとなっています。駆動装置は亀電の電車としては初めてのカルダン駆動が採用されました。
 導入当初よりパンタグラフを装備する車両は、亀電においてはこの電車が初めてです。
 台車は川崎車輛製のスイングハンガー式台車を採用しています。軸箱支持装置はウイングばね式が採用されました。ウイングばね式は性能は折り紙付きであるものの、単バネ式に比べて車輪一輪当たりのバネ数が単純に2倍となるため、保守性は劣ります。このような重厚な構造を備えたこの台車は、乗り心地では当時としてはかなり快適な部類であったと言われています。しかしこのような性能は亀電の路線にとってはいささかオーバースペックと言えます。これは亀電の高速化や延伸を見込んだものであったとされています。もっとも、亀電の高速化は最高速度70km/hで頭打ちとなり、延伸計画も何度も持ち上がっては立ち消えとなり、今まで一度も実現していません。
当時の川崎車輛はOK台車を積極的に売り込んでおり、400形も計画初期段階ではOK台車になるはずであったと言われています。しかし亀電は、OK台車では亀電の急曲線に不適であるとしてウイングばね式を希望し、最終的にウイングばね式が採用されました。一説では、川崎車輛と亀電間での設計会議では、その大半の時間が台車の選定について話し合われたと言われています。
 制動方式は非常弁付直通空気ブレーキSMEとなっています。SMEは1960年製の電車用制動装置としては若干時代遅れと言えますが、これは亀電程度の両数の電車であればSMEの応答性で十分であることや、旧型車との連結が可能となること、またSMEの整備性の高さなどを考慮した結果です。
 製造当初は非冷房でしたが、冷房車である600形および700形の登場後には大型車体の中で400形のみ非冷房という状況になってしまったため、その格差を解消するために1992年から冷房化改造が行われました。


仕様・性能

制御装置電動カム軸式
抵抗制御・直並列制御・弱界磁制御 4M1C
製造:東洋電機
主電動機直流直巻電動機
53kW×4基
製造:東洋電機
駆動装置中空軸平行カルダン
製造:東洋電機
台車車体支持方式:スイングハンガー式
枕ばね:コイルばね
軸箱支持方式:ウイングばね式
製造:川崎車輛
制動方式SME
非常弁付直通空気ブレーキ
製造:日本エヤーブレーキ
発電制動併用
歯車比5.60
起動加速度2.5km/h/s
設計最高速度90km/h
構体普通鋼
全長15,000mm
全幅2,600mm
全高3,980mm
車体長14,450mm
自重25.0t
定員93人(座席33人)
在籍両数1
製造両数6
登場年1960年
製造川崎車輛


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