亀電が輸送力増強のため、1993年に導入した通勤電車です。
武庫川車両工業で1993年から1994年にかけて2編成が製造され、現在も2編成が在籍しています。なお、この800形は完全新製ではなく、機器の一部が京阪600形から流用されています。
1980年代後半、バブル景気と温泉ブームによって亀電の需要は急増していました。ブームが始まった1985年当時、亀岡本線では、ラッシュ時は15分ヘッド、日中は20分ヘッドで運行を行っていましたが、これでは急増した乗客を捌き切れず、1986年にラッシュ時は10分ヘッド、日中は15分ヘッドへと大規模な増発を実施しました。しかし、その当時の亀電の車両数ではこのダイヤに対応しきれず、定期運用を脱して予備車となっていた300形を再び定期運用に登用するという、苦肉の策でなんとか車両を補っていました。旧性能の上に輸送力も低い300形がランダムにやってくるという状況は、現場に混乱を引き起こし、遅延や積み残しの原因となっていました。そのような状況を打破するために1988年に計画されたのが、この800形です。
当初は完全新製で計画が進められていたものの、電車の新造は製造費が非常に高価となることから、少しでも価格を抑えるために、一部の機器は他社の中古品を調達することに計画が変更されました。しかし、そう都合よく中古の機器類が手に入るはずもなく、機器類の調達は1993年に京阪600形改造工事が実施されるまで待つことになってしまいます。その頃には既にバブル経済は弾け、乗客数は減少傾向に転じていました。当初は3編成が製造され、300形を完全に置き換える予定でしたが、当初と状況が一変したことから計画を2編成へと下方修正し、300形は引き続き予備車として在籍し続けることになりました。
とは言え、亀岡本線の安定した高頻度運転はこの電車の登場無くして成し得なかったことには違いなく、90年代の亀電を支えた電車と言えます。
車体は普通鋼製溶接構造となっています。登場時から二両固定編成と非貫通前面を採用しており、これは亀電では初めてのことです。前面部はくの次に折れ曲がった近代的なスタイルとなっています。旅客用ドアは片側3ドアとなっています。
前照灯は、前面上部に白熱灯が二灯装備されています。尾灯はLED製のものが車体下部に取り付けられており、橙色に点灯させて補助灯としても利用できます。
塗装は600形から続くクリーム地にラインが二本入る亀電一般色となっています。
全車電動車となっています。主制御装置は抵抗制御・直並列制御・弱界磁制御を行う電動カム軸式のACDF-M853-788Bが採用されており、方式は8M1Cとなっています。制御装置は奇数号車(湯之花温泉寄り)に搭載されています。この制御装置は、京阪電鉄600形の昇圧改造の際に取り外された東洋電機製のACRF-M853-788Aを亀電が買い取った上で、東洋電機が改造した物です。改造の主な内容としては、回路組み換えによる回生制動のオミットが実施されています。これによって回生制動が使えなくなったため、型番が回生制動を示すACRFから発電制動を示すACDFに変更され、添字もAからBへと変更されています。この制御装置は定速制御が可能となっており、ノッチにて任意の速度を指示することで作用します。
主電動機は東洋電機製の出力53kWのTDK-8565-A 直流複巻電動機が採用されています。これは主制御装置と同じく京阪電鉄から買い取ったものすが、こちらは大きな改造がなされることなく、型番もそのままに流用されています。歯車比は84:17=4.94で、駆動方式はTD平行カルダン駆動が採用されました。起動加速度は2.7km/h/sに設定されています。
制動方式は電気指令式空気ブレーキHRD-1で、発電ブレーキが付加されています。
台車は、住友金属工業製のインダイレクトマウント式台車が採用されました。これは600形や700形で採用されたものと同型の台車です。
機器類の配置や配管については、整備性を考慮し、基本的に700形と共通となっています。また、京阪600形から流用された部分を除いて、700形と共通の機器が多く採用されています。
制御装置 | ACDF-M853-788B 電動カム軸式 抵抗制御・直並列制御・弱界磁制御 8M1C 製造:東洋電機 |
主電動機 | TDK-8565-A 直流複巻電動機 53kW×8基(編成総数) 製造:東洋電機 |
駆動装置 | TD平行カルダン 製造:東洋電機 |
台車 | 車体支持方式:インダイレクトマウント式 枕ばね:ダイヤフラム形空気ばね 軸箱支持方式:緩衝ゴム式 製造:住友金属工業 |
制動方式 | HRD-1 電気指令式空気ブレーキ 製造:ナブコ 発電制動併用 |
歯車比 | 4.94 |
起動加速度 | 2.7km/h/s |
設計最高速度 | 90km/h |
構体 | 普通鋼 |
全長 | 15,000mm |
全幅 | 2,600mm |
全高 | 3,980mm |
車体長 | 14,450mm |
自重 | 奇数車・偶数車とも:23.5t |
定員 | 100人(座席38人) |
在籍両数 | 4 |
製造両数 | 4 |
登場年 | 1993年 |
製造 | 武庫川車両工業 |