車両紹介-900形


概要

 亀電が2001年に導入した観光電車です。亀電の看板車両となるべく、「お客さまに上質な小旅行を提供する」をコンセプトに設計された、高級な内装が特徴となっています。「ゆのはなゆけむり号」という愛称があり、車体各所にそのロゴが掲出されています。しかし、ゆのはなゆけむり号と呼ばれることは少なく、一般には「ゆけむり号」と呼ばれています。
 武庫川車両工業で2001年から2002年にかけて2編成が製造され、現在も2編成が在籍しています。なおこの900形は武庫川車両工業が最後に製造した車両として知られています。

登場の経緯

 亀電は1970年代の後半から1980年代の前半にかけて、莫大な赤字を計上する赤字期を迎えていました。しかし、1980年代後半に入るとバブルに伴う温泉ブームが到来します。このブームによって湯之花温泉は観光客が倍増、亀電も乗客数を取り戻し、赤字期に積み上げた負債を解消してしまうほどに経営が改善しました。ただ、この好調も所詮は一過性のブームによる賜物であり、バブル経済が弾けると、乗客数は再び減少に転じてしまいます。1993年に実施された大規模な増発によって、ある程度は地元客を獲得していたものの、このままいくと2000年代に入れば再び70年代後半のような状況に陥るであろうことは目に見えていました。このような状況を打破するためには、観光客を呼び寄せ、地元客の利用にもつながる何らかの策が必要だと考えた亀電は、その決定打として完全新製の電車を計画しました。それがこの900形です。結果としては、900形は亀電の定期客数・不定期客数をともに増加させることに成功したと言われています。

内装

 内装は、「お客さまに上質な小旅行を提供する」をコンセプトに、和風テイストを取り入れつつ、全体的に落ち着いた雰囲気にまとめられています。各部に不燃処理を施した北山杉が採用され、床やドアの内側も木目調に仕上げられています。座席はセミクロスシート方式を採用しています。クロスシート部の座席は、バケット形状の座面となっており、座り心地を第一に考えた設計になっています。ロングシート部もヘッドレストこそありませんが、座り心地はクロスシート部にひけを取らないものとなっています。この内装は亀電自らが手掛けたもので、内装の設計から艤装作業まで、すべて亀電が行いました。このような内装によって、900形は亀電の大幅なサービスレベル向上に寄与しました。

外観

 車体は普通鋼製溶接構造となっています。旅客用ドアは前後2ドアで、今までの亀電の電車とは印象が大きく異なります。
 前照灯は、霧の多い亀岡において視認性を確保するため、前面上部にシールドビームを二灯、下部にも二灯の計四灯とし、さらにフォグランプが下部前照灯の横に取り付けられています。尾灯はLED製とし、台枠下部に取り付けられています。尾灯は橙色に発光色を変更でき、補助灯としても利用できます。車体の四隅には、今までの亀電と同じように車幅灯が取り付けられていますが、登場当初からLED製が採用されていたのは、900形が初めてです。
 塗装は、湯乃花温泉の湯の色をイメージした白藍にラインが入ったものになっています。ラインカラーは、ベースとなる紅の上側に、アクセントの金色を隔てて編成ごとに異なる色が配されており、901-902編成は亀電伝統の紫色塗装を引き継ぐ紫紺、903-904編成は亀岡市を流れる桂川の水を連想させる紺青となっています。共に日本の伝統色であり、高級感を想起させる色が選ばれています。

機器

 全車電動車となっています。主制御装置は東洋電機製の2レベルIGBT-VVVFインバータ制御装置が採用されており、方式は2M1C4群となっています。制御装置は奇数号車(湯之花温泉寄り)に搭載されています。故障時に1群ずつ切り離しが可能で、2群のみでの亀電最大勾配40‰での起動が可能な設計になっています。主制御装置には定速制御機能が備えられており、任意の速度において定速ノッチに入れることで作用します。
 主電動機は東洋電機製の出力60kWの三相かご形誘導電動機が採用されています。歯車比は85:14=6.07で、駆動方式はTD平行カルダン駆動が採用されました。起動加速度は3.0km/h/sに設定されています。
 制動方式は電気指令式空気ブレーキHRD-1で、発電ブレーキが付加されています。
 台車には、住友金属工業製のインダイレクトマウント式のものが採用されました。この台車は、機構的には600形〜800形が装着するものと同一ですが、台車枠および枕梁の製造方法が見直され、軽量化されています。

イメージ戦略

 900形の乗客をひきつけるという機能は、車両単体で完結しません。この車両の導入を伝える広告を橙的に打ち出したのです。亀電の駅や亀岡市内の街頭に掲出された広告では、快適に市内を移動できるといった内容を推し、その一方で、JRや他の関西私鉄の駅、亀岡市外の街頭に掲出された広告では、関西の奥座敷湯之花温泉への上質な旅を前面に推すという、利用者に合わせた二通りの広告内容を用意しました。さらには湯之花温泉観光協会と共同でテレビCMを制作し、関西の各テレビ局にて展開していました。これらの広告の効果はすさまじく、当時は、地元客・観光客を問わず、「あのCMの車両はいつ乗れるのか」という問い合わせが後を絶たなかったと聞きます。
 また、900形の車内広告は、原則として湯之花温泉の旅館や施設の広告のみを許可し、さらにその内容やレイアウトに独自の規則を設け、あまり目立たないように配慮されています。


仕様・性能

制御装置2レベルIGBT-VVVFインバータ制御装置 2M1C4群
製造:東洋電機
主電動機かご形三相誘導電動機
60kW×8基(編成総数)
製造:東洋電機
駆動装置TD平行カルダン
製造:東洋電機
台車車体支持方式:インダイレクトマウント式
枕ばね:ダイヤフラム形空気ばね
軸箱支持方式:緩衝ゴム式
製造:住友金属工業
制動方式HRD-1
電気指令式空気ブレーキ
製造:ナブコ
発電制動併用
歯車比6.07
起動加速度3.0km/h/s
設計最高速度90km/h
構体普通鋼
全長15,000mm
全幅2,600mm
全高3,980mm
車体長14,450mm
自重奇数車・偶数車とも:25.0t
定員80人(座席34人)
在籍両数4
製造両数4
登場年2001年
製造武庫川車両工業
内装亀岡電鉄


Copyright (c) 2012〜 亀岡電気鉄道倶楽部 All Rights Reserved
inserted by FC2 system