幻の亀電80形

かつて、亀電は『80形電車』を採用しようと検討していた事がありました。形式から判断するに戦前のことかと思うかもしれませんが、そうではありません。1990年代、ほんの最近のことです。

京阪80形電車


京阪80形電車は京阪が大津線向けに1961年に導入した電車です。
路面電車サイズで吊り掛け駆動でありながら66.7‰をスイスイと登れるほどの高性能を持ち合わせていました。
また、登場から半世紀以上が過ぎた今でも古臭さを感じさせないスタイルを持ち今でも人気の高い電車です。
しかし、この電車は1997年の京津線京都末端部の廃止に合わせて、廃車となってしまいました。

80形譲渡計画

さて、そのような80形電車、廃止に際しては複数の鉄道会社が譲受に名乗りを上げていました。300形の置き換え方法を模索していた亀電も譲受を計画していました。
とくに亀電は、譲受に名乗りを上げた鉄道の中ではもっとも京津線に近いため輸送が比較的簡単であり、また京津線と同じように併用軌道も急勾配もあり80形の性能をいかんなく発揮できる場であるとして、最有力候補となっていました。
また、亀電は京阪の技術協力を受けていることから、列車無線や連結器高さを初め似通った規格が多く、ほとんど改造をせずに亀電にて運転可能でした。亀電への譲渡はほとんど決定していたといっても過言ではありませんでした。
実際、亀電は1994年のプレスリリースにて京阪80形を譲受する予定であるとして、イメージイラストや形式を80形として導入する予定である事まで掲載していました。

しかし、弊害がなかったわけではありません。
京阪80形は京津線を走るためだけに設計された電車であるため、多くの電装品が特殊な設計となっています。
また、駆動装置は前時代的な吊り掛け駆動で、置き換え対象である300形と同じ吊り掛け駆動を導入するのはサービス面で見れば得策ではないとの見方もありました。

結末

結局、亀電80形は、亀電が観光を重視した新型車両の導入を検討すると1996年に発表したことにより、幻となってしまいました。
その後、どこの鉄道にも譲渡されずに、80形は廃車解体されてしまいましたが、82号が完全な状態で、81号がカットボディとして京阪錦織車庫にて保存されています。
毎年11月頃には大津線感謝祭にて80形は一般公開され、車内にも立ち入ることが可能となります。亀電を走ったかも知れない電車に会いに一度錦織車庫を訪れてみてはいかがでしょうか。




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